弔事の「香典返し」として用いられることも多いお茶。「お祝いごとでお茶を贈るのはタブー」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際は決してそんなことはありません。むしろ、お茶はさまざまなお祝いの場面での贈り物に適しています。
今回は、なぜお茶のギフトが「タブー」といわれることがあるのか、それでもお茶を贈るのがおすすめである理由について見ていきましょう。
お茶といえば「香典返し」のイメージが強い理由
お葬式に参列した際、「香典返し」としてお茶を受け取ったことがある方も多いことでしょう。そのため、お茶＝弔事で用いるものというイメージが広まっています。まずは、なぜ香典返しの品としてお茶が選ばれるのか理由を紹介します。
香典返しには「消え物」が好まれるから
お茶の実用性の高さが香典返しに適している、というのが1つ目の理由です。
そもそも香典返しは弔事でのお返しですから、後に残らない「消え物」が好まれます。お茶に限らず、飲食料品は全般的に消え物ですが、中でもお茶が好まれるのは次のような理由からです。
・軽くてかさばらないので、もらった相手が持ち帰りやすく負担をかけずに済むから
・賞味期限が長くて日持ちするから
・人によって好き嫌いが分かれにくく、来客時などにも使いやすいから
弔事は突然訪れるものであるため、人を選ばず、何かと使い勝手のいい消え物として、お茶が香典返しに選ばれるのです。
お茶には仏教的な意味合いが込められているから
お茶が香典返しとして選ばれるのには、もう1つ、宗教的な意味合いがあるとも言われています。
日本におけるお茶を飲む文化は、もともと鎌倉時代に宋（中国）へ修行に出た禅僧・栄西（えいさい、ようさい）が中国から伝えたものとされています。その後も、室町時代に大成した茶の湯をはじめ、お茶は禅の思想と深く関わってきました。
こうした背景もあり、仏壇にお茶を供える習慣や、寺で催される仏事においてお茶を出す習慣が定着したとされます。
また、古くからお茶には「境界を区切る」という意味合いも込められてきました。理由は定かではありませんが、禅の思想と深く結びついたお茶が精神世界と融合し、お茶を飲むという行為が「内面にある精神世界へと踏み入れる」第一歩となっていたことに由来するのかもしれません。
この「境界を区切る」という役割が、この世とあの世の間を区切るというところに行き着いた結果、故人との別れを象徴づけるものとして、お茶が香典返しに用いられるようになったという側面もあるようです。
ちなみに、狭山地方では今でも、敷地や畑の境界にお茶の木を植えている光景をよく目にします。当たり前のように感じるこの光景も、お茶の持つ「境界を区切る」という役割から来ているのかもしれませんね。
それでもお祝いにお茶のギフトがおすすめといえる理由
ここまで、お茶がなぜ香典返しとして用いられるかを見てきました。弔事のイメージが強いためにギフトとしてタブー視されることもあるお茶ですが、実はお祝いにも適しています。続いてはその理由を紹介しましょう。
お茶にはお祝いにふさわしい謂れがあるから
お茶は新芽を摘んでも新たな芽が次々と出てきます。このことから「おめでたい（お芽出たい）」象徴として、縁起の良いものとされてきました。
また、チャノキは根を縦横に張り生命力も強いことから、「良い家庭を築いてほしい」という意味合いで、婚礼の贈り物としてもふさわしいとされてきました。
このように、お茶にはお祝いにふさわしいたくさんの謂れがあるのです。
地域によってはお祝いごとに用いられているから
お茶は弔事の定番として用いられる一方、地域によっては結婚式の場でお茶を飲み交わす風習があるなど、お祝いごとに欠かせないものとして振る舞われるケースも多くあります。
上質なお茶は大切なゲストやいつもお世話になっている方への贈答品としても好まれ、決して弔事だけに特化したギフトではありません。
なお、この点に関しては地域差があるのも事実です。ギフトにお茶を選んでいいかどうか悩んでいる場合には、お住まいの地域の慣習をあらかじめチェックしておきましょう。
【ちょっと豆知識】「茶寿」とは？
88歳は「米寿」、99歳は「白寿」といいますが、108歳のことを「茶寿」と呼ぶのはご存じでしょうか？
草かんむりは旧字体で「十」が2つ並んだ形をしており、茶という漢字は八十八の上に2つの十が並んでいるように見えます。
これらの数字を足し合わせると「10＋10＋88＝108」となるため、108歳を茶寿と呼ぶようになったといわれています。
少し話は変わりますが「茶柱が立つ」ことは縁起担ぎの代表例です。本来は、お祝いやおめでたい場にこそふさわしいのがお茶といえるのではないでしょうか。
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