抹茶と玉露茶、煎茶の違い

最終更新: 8月23日

最近では世界的にも大人気の抹茶(まっちゃ)。

誰もが「なんとなく高級なお茶」というイメージを持ってはいるものの、実際に抹茶がどのように作られ、どのような特徴を持っているのかを知らない人も少なくないのではないかと思います。

今回は、玉露茶(ぎょくろちゃ)、煎茶(せんちゃ)との違いとあわせ、抹茶の作られ方やその特徴についてまとめてみたいと思います。


抹茶

1.味の特徴

一般的に、抹茶や玉露茶は煎茶よりも『うまみ・あまみ』が強く、色みもあざやかで美しく、上品でふくよかな香りを持つのが特徴だとされています。

確かに、高級な抹茶や玉露茶は、ひとくち含んだ瞬間に口いっぱいにお茶のい~い香りとうまみ、ほどよい苦みが広がり、お茶本来の良いところが濃縮されたような味わいを楽しむことが出来ます。


海外の方など、人によっては高級な抹茶や玉露を


「まるでお出汁のようだ」


と形容なされることもあります。


お茶に含まれるテアニンというアミノ酸成分によるうまみの強さ。

そして、淹れたお茶の水色の良さに、上品で芳醇な香り高さ。


これらが、抹茶・玉露茶の持つ特徴と言えるでしょう。


玉露茶・煎茶

2.お茶の樹の種類

そもそも、「抹茶や玉露茶、煎茶はお茶の樹の種類が違う」と思っていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。


しかし、決してそんなことはないのです。


もちろん、茶の樹によって抹茶や玉露を生産するのに向いている品種というのはありますが、理論上はどんなお茶の樹からでも抹茶、玉露茶、煎茶を生産することができます。


▼抹茶や玉露茶に適していると言われるお茶の品種

さみどり、ごこう、せいめい、さえみどり、あさひ、ほうしゅん など



茶の樹

3.抹茶・玉露茶の育て方

「お茶の樹が同じ品種でも抹茶や玉露茶を作ることができる」というのであれば、抹茶と玉露と煎茶は一体何が違うのでしょうか。


まず、抹茶・玉露茶と煎茶の間には、収穫直前の育て方に大きな違いがあります。


抹茶と玉露茶は、新芽が2~3枚ひらき始めた頃、収穫を迎える約3~4週間前にお茶の樹に被覆(ひふく)をします。要は、寒冷紗(かんれいしゃ)や藁(わら)を屋根替わりに、茶の樹にあたる日の光をさえぎるのです。


そうやって日光があたらない状態で育てるというのが、抹茶・玉露茶の1つ目の大きな特徴です。


※補足※

収穫前約2週間ほど日の光をさえぎり、玉露と煎茶の良いとこ取りをした『かぶせ茶』というお茶もあります。

★かぶせ茶については別記します




4.被覆をして育てると何が変わるの?

そもそもお茶の『うまみ・あまみ』の成分は、テアニンというアミノ酸(ポリフェノール)です。

このうまみの素であるテアニンは、冬の間にお茶の樹の根の部分でつくられ、春先に新芽へと移動します。

春先に収穫する一番茶がおいしいと言われるのは、こうして冬にたくわえられたテアニンがたっぷりと新芽に含まれているからなんですね。


しかし、このうまみ成分のテアニン、日光を浴びると健康成分の『茶カテキン』へと化学変化します。簡単に言いかえるならば、「うまみ成分が減って、健康成分・苦み成分が増える」ということなのです。


このように、新芽に日の光があたるとうまみ・あまみ成分のテアニンが苦みの強い茶カテキンへと変化してしまうため、うまみを強く残したい抹茶や玉露茶は、収穫のおよそ1か月前に日の光をさえぎるようにして育てるのです。


※補足※

テアニン・カテキンなどのお茶の成分・効能について詳しくはコチラ



さらに、日の光が足りないと植物はじゅうぶんな光合成ができません。

日の光が足りず、光合成がじゅうぶんにできない状況下におかれると、植物はその葉に葉緑体(ようりょくたい)をより多く作り、少ない日の光でもじゅうぶんな栄養を生成できるよう環境適応します。


こうして葉緑体の量が多くなると、おのずと葉の緑色は濃くなります。


このように『葉緑体を増やす』という茶の樹の環境適応により、お茶の水色の鮮やかな緑色に繋がるのです。




5.抹茶と玉露の違い

さて、収穫前の育て方によって、抹茶・玉露と煎茶の間に違いがあることは先ほどご説明しました。

では、抹茶と玉露にはどのような違いがあるのでしょうか。

その違いは、収穫後の加工の方法にあります。


■抹茶の場合

抹茶は、被覆をして育てた茶葉を収穫後、加熱して青殺(さっせい)し、『茶葉をもまずに』加熱乾燥処理を行うところに特徴があります。通常の煎茶であれば、蒸熱を使って乾燥させていく過程で茶葉を揉む(揉捻(じゅうねん)と言います)ことで内部の水分を押し出しながら乾燥を進めるのですが、抹茶の場合は茶葉を揉むこと(揉捻)をしないわけです。


こうして揉捻せずに乾燥させた茶葉を『碾茶(てんちゃ)』と言い、この碾茶を石臼で挽いて粉末にしたものを『抹茶』というのです。


石臼 ※引用元:あいや伝想茶屋(https://www.facebook.com/aiyadensochaya/)

■玉露茶の場合

玉露茶の場合、その加工方法は煎茶と同様になります。

被覆をして育てた茶葉を収穫後、加熱して青殺(さっせい)し、茶葉を揉捻しつつ、蒸熱を使って加熱乾燥させていくわけですね。

もちろん、上質な玉露茶の加工工程には煎茶以上に繊細な手間暇をかけていらっしゃるお茶農家さんもいらっしゃいますので一概には言えませんが、一般論としてはその加工方法は蒸し製煎茶法に準じるのです。


※補足※

①煎茶の加工方法(蒸し製煎茶法)については別途記事にします

②青殺(さっせい):茶葉に含まれる酸化酵素の働きを加熱して止めることを言います。


【茶葉の加工フロー】



6.なぜ抹茶・玉露茶は高級茶と言われるのか

ここまでご説明してきた通り、抹茶、玉露茶は収穫前に被覆をする分、茶農家の方々の手間ひまがかかっています。

加えて、被覆をするとどうしても光合成による養分の生成が制約されるため、肥料を煎茶よりも多く与えないとじゅうぶんな発芽を促すことができません(この点は、無農薬・無肥料で抹茶を栽培されている茶農家さんもいらっしゃるため、一概には言えないのかもしれません)。


さらに、どんなに肥料を潤沢にあたえても、通常よりも発芽量は制約され、収穫量は少なくなってしまいます


手間ひまがかかり、コストも上がり、それでいて収穫量は少なくなる。

だからこそ、味わいが深く、香り高く、お茶本来のうまみが濃縮された美味しいお茶になる。


抹茶と玉露茶が高級茶として扱われる理由は、こうしたところにあるのです。



7.玉露茶の美味しい淹れ方

私はあくまで農家なので、残念ながら茶道のこころえはありません(いつかは勉強したいと思っています)。そのため、抹茶のおいしい点て方は残念ながらきちんとご説明差し上げられないのですが、玉露茶や上級の煎茶(要は、うまみやあまみの強いお茶)は低い温度のお湯(60℃~70℃程度)で淹れていただくことをおすすめしています。


お茶のうまみ成分であるテアニンは低い温度で抽出されやすく、苦み・渋みの主成分である茶カテキンは高い温度で抽出されやすい性質があるため、玉露茶の真骨頂であるあまみ・うまみを楽しむためにはお茶を淹れるお湯の温度を低めにすることが重要なのです。




8.おわりに

さあ、いかがだったでしょうか。

おおまかにではありますが、抹茶・玉露茶、そして煎茶の違いについて、お分かりいただけたでしょうか。


日本茶の世界には、このように『知っているようで知らない』奥の深~い地平がどこまでも広がっています。


今後もお茶について様々な角度から情報をまとめてお届けしていきたいと思いますので、どうかまたご覧いただけたなら幸いです。


心安らぐひとときを 一杯の日本茶とともに。


それでは、また。

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